[ 2011年07月12日 ]

#272(大学編)……原点

ユニバーシアード日本代表発表。

ラスト1人。



会場にDJの声が響く。

12人目、最後の選手をコールする。



DJ《15番!!!! ガード・フォワード!!!》


スポットライトが沢北栄治を照らす。


「ん? 誰だ!!!?」

ファンの中には彼の顔を知らない者もいる。


だが、知っている者にとっては、この上ないビッグサプライズだった。


「ああ…!!!! あれはまさか…!!!!?」

「あの男は…!!!!」


DJ《Ace (エース)!!!!》


DJ《沢北栄治!!!!!!!》



会場爆発。


「うわああああああーーーーーーーーー!!!!!!!」

「沢北!!!」

「沢北栄治だ!!!!!!」

「元・山王の沢北だあああーーーーー!!!!!!」


「こりゃとんでもねえ隠し玉が残ってた!!!!!」

「スゲエ!!! まさにドリームチームだ!!!」



河田 「おほっ。こりゃ凄い人気だ」

諸星 「チッ…。沢北め…」



沢北が河田美紀男の横に並ぶ。


沢北 「よく残ったな、美紀男!」

河田美紀男 「ハイ!! ありがとうございます!!」


沢北 (さあ、挑戦だ!!)





プレスルーム。


モニターを眺める弥生。

「ふふふ。お客さんにとっては最高のサプライズね」



カタカタカタ……!!!!

彦一は大急ぎでキーボードを叩く。

「さあ、3時までにどれだけ書けるか!! 勝負やでえ!!」






そして、しばらくの後―――




選手発表を兼ねたオープニングセレモニーを終え、
明かるさを取り戻した会場では…


ザワザワ…

先ほど発表された12人についてファンが様々な議論を交わしていた。


「沢北が入ったか。これは期待が持てるぜ」

「スタメンはどうなるかな。PGは牧かな」

「神と三井はどっちが出てくるんだ!?」


ケータイ電話で速報記事を確認する者も。


「おいおい!!深津は怪我だってよ。週バスのサイトに出てるぜ!」

「おお、こっちのサイトにも週バスの記事が出てるぜ。早い!!」



弥生、ニヤリ。 (彦一、でかした!)





関係者席。


森尾 「面白そうなメンバーだな、桜木。明日の試合は気合入れないとな」

桜木 「フン。所詮は学生よ。プロにはかなわん」


森尾 「フッ。そういえば、もう一人アメリカにいたよな。面白いのが」

桜木 「ぬ?」


森尾 「ぬ、じゃねえよ。昔の仲間だろ」

桜木 「フン」


森尾、ニコリ。

「なんで彼が今回のメンバーに入ってないか知ってるか?」


ギン!

桜木 「実力が足りんからだ!」


森尾 「彼に実力があるかないかは、お前が一番分かってるだろ」


桜木 「ぬ…」




プレスルーム。


彦一 「ふぅ~。姉ちゃん、わいの記事はどうやった?」

弥生 「まあ、合格やな。クビはナシかな」


改めてメンバー表を確認する二人。

彦一 「元・神奈川勢はやっぱり凄いなあ。6人。半分やで」

弥生 「さらに、仙道、流川、桜木がまだおるし…」

彦一 「清田君やフクさん、花形さんもおるで」


ひと仕事終え、しみじみと話す2人。


彦一 「せやけど、なんで流川君は辞退したんやろ…」

弥生 「やっぱり気になる?」

彦一 「そら気になるわ」


弥生が続ける。

「どうもアメリカでのチーム事情よりも、今回のメンバーの
問題のほうが大きいらしいで」

彦一 「ん? どういうことや?」



弥生、ニコリ。

「同じチームに、ある選手がおらんのが不服だったみたいやわ」


彦一 「ある選手って……、まさか」





アリーナ、関係者席。


森尾 「誰かがいないから断ったんだとよ」

桜木 「………。」


森尾 「お前らヘンなコンビだよな。仲がイイのか悪いのか」

桜木 「フン。いいわけねーだろ」





プレスルーム。

弥生 「なあ、彦一。これで特集やってみない?」

彦一 「流川君……、桜木さん……」


弥生がメンバー表を眺めながらニコリ。

「このユニバ代表メンバーにも赤木、三井、宮城が入っとるし、
春のトーナメントで一番目立ってた1年生も荒石&天崎やったし…」

(まあ、宮城君はちょっと運の部分もあったけど)


彦一 「つまり…、湘北やな」


弥生が彦一の肩を叩いた。

「流川君は、日本代表を辞退するくらい、桜木不在を重く見た。
流川君と桜木君の間には、それだけの何かがあるんやわ。
なんなんやろね、湘北の二文字が持つ何かって」


彦一、深くうなずく。

「トーナメントでも湘北勢が見せた勢いは凄かったしなあ。
高校時代、ずっと近くで見てたチームやけど、あの不思議なパワーには
いっつもビックリしとったなあ…」


弥生がモニターを見る。

試合前のベンチの様子が映っている。


赤木、三井、宮城が、なにやら喧嘩をしているかのような顔で喋っている。

その後、赤木のゲンコツが宮城に炸裂する画。

笑う三井。

三井のほうを顔を向ける赤木。

一目散に逃げ出す三井。



弥生 「フフ。兄弟みたいね」

(CM中でよかったわ…)


机の上の週刊バスケットボール誌には、春のトーナメントの特集。

天崎と荒石を中心とした新人特集のページが開かれている。



彦一 「湘北かあ………」



弥生 「どうやら、今度の特集のテーマはこれでキマリね」







ユニバーシアード代表メンバーに3人の選手を送り込み、

学生トーナメントを沸かせた新星2人を生み出し、

アメリカでプロになろうとしている男の出身校であり、

史上初の高卒プロを誕生させたチーム―――




湘北。




王朝時代の山王は史上初の敗北を味わった。

怪物・森重寛は、彼らとしのぎを削って成長した。

藤真健司の栄冠への道のりの途中にも湘北がいた。


いま、日本バスケ界が描いている軌跡は、この湘北なくしては
語れないストーリーと言っても過言ではない。


あの山王工業戦の奇跡の勝利から、2人の逸材によって
達成された全国制覇までの旅路とは――



そして、

桜木花道と流川楓。


終生のライバルと呼ばれ、日本バスケ界を大きく動かす2人が
たどったストーリーとは―――





物語は、一度時計の針を戻し、


湘北を追う。


次の話へ
大学編
目次

引用「Kの部屋」

[ad]