[ 2011年07月12日 ]

#268(大学編)……努力

残り時間 22秒

深体 90
青葉 93


タイムアウトの間、放送席、記者席、観客席では
様々な議論が展開されていた。


************************************************************

放送席。

道谷《塚本さん、3点差です! 青葉が大きなリードを奪いました!
深体大はどういう作戦で来るでしょうか!》

塚本《時間を使って3点で同点、延長を狙うか、すぐに2点を獲り行き、
2回攻撃する作戦で来るか。どちらかでしょう!》


道谷《森尾さんならどうしますか?》


森尾《すぐに2点を獲りに行きますね。中は深体大が有利なので、
中にボールを入れて2点を獲り、次のディフェンスを頑張ると…》

塚本《まずは10秒以内で決めたいですね》


森尾《いまチームファウルはいくつでしたっけ?》

道谷《互いに3つですね》


塚本《あと2つでフリースローです。ファウルゲームもありえますね》

道谷《物凄く濃い22秒になりそうです!!》

 

記者席。

弥生 「中村君ならどうする?」

中村 「え…? いきなり言われても…。えっと、22秒で3点だから…」

弥生 「しゃきっとしなさい。じゃあ、3点と2点、どっちを狙う?」

中村、少し考え

「やっぱり3点ですかねえ。諸星君のスリーポイントを狙うか、
牧君、河田君の3点プレーで同点に…」


弥生、ため息。「はぁ…、ダメね…」 

中村 「え?」


弥生が呆れ顔で続ける。

「まだまだね、中村君。ファウルをもらっての3点プレーはまず無理。
2点を獲られても追いつかれない中で青葉がファウルをするわけがない」

町田が続く。

「陸川監督もノーファウルについては、強く指示しているでしょうね。
まあ、当たり前ですけど」


ズーーーン……

中村 (ダメ……、まだまだ……、当たり前………)

 

観客席。

腕組みの杉山。

「ベンチワークも注目だな。2点を狙うなら河田美紀男、
3点を狙うなら伊達健太あたりの投入があるかもしれない」

赤木が続く。

「青葉もしかりだ。前川を入れて中の守備とリバウンドの強化を
図ってくる可能性がある。特にリバウンドは大事だ」

桜木がニヤリ。

「リバウンド制す者はゲームを制す!」

************************************************************

 

『ビーーーーーーーーーーーー!!!!!』

 

タイムアウトが明けた。

そして両軍に残されたタイムアウトがなくなった。

 

道谷《さあ、残り22秒!! いよいよクライマックスです!!》

塚本《おっと、メンバーも代わってますよ!》


深体大、樋口を下げて、河田美紀男を投入。

三井 「河田弟だ! 高さを強化してきた!」


青学大、家村を下げて前川を投入。

宮城 「青葉も代えてきた。同様に中の選手を投入だ」

 


コートに入る藤真。

(落ち着け、落ち着くんだ。もう少しで勝てる…!)


(藤真……)

藤真の背中を後ろから見ている前川。


ポン!


そっと藤真の肩を叩いた。


「前川…?」 藤真、振り向く。


前川、ニコリ。

「ディフェンスはマンツー、絶対ノーファウル、覚えとるか?」


藤真、気づく。 (しまった、指示を聞いてない…!!)


前川 「フッ、指示はそれだけやで。とにかくしっかり守ろな」


「ふぅ…」 藤真、一息。

(助かったよ、前川…)


それを見て、陸川がニコリ。

「藤真、緊張してるな。まあ、無理もないだろう」

(前川、ありがとう)

 

残り時間が2分を切っているため、ハーフラインからのスローイン。

レフェリーが諸星にボールを渡す。


道谷《さあ! 試合再開です!!》

塚本《青葉はマンツーマンに変えました! 外を牽制しています!》


諸星には天崎、牧には藤真、大野には神。外のシューターをケア。

陸川 (3点だけは撃たせるなよ)

 


キュ!!!


「牧!」 大野が藤真にスクリーン。


これで一瞬フリーになった牧にボールが入る。

 

同時に時計が動き出した。

 

塚本《さあ、牧君に入った!》


藤真がチェック。


「牧VS藤真!!!!!」

 

ダム!


牧のドリブル!

藤真は必死についていく。

(これで最後だ…!!! 絶対に抜かせん!!)

 

「かわせないか!!!?」

 

キュ!!! 牧、急ストップ!


ダム!!

そして、フロントチェンジ!


藤真をかわしハイポストにボールを放り込む。


弥生 (さっき失敗したプレーを…!!!)

彦一 (アンビリーバブル……!!)

 

バシ! そこには河田雅史。


道谷《河田兄だ!! ハイポスト!!》

 


キュ!! 河田、その場でターン。


森重が目の前で右手を挙げている。

 

クイ!


河田が一瞬、シュートフェイクを入れる。

 

ピク!

森重がこの動きにわずかに反応。

 


ビッ

河田、次の瞬間、ローポストにボールを放る。

 

塚本《ハイ&ロー!!!!!》


赤木 (最もオーソドックスな中のプレイで来た!!!)

 


残り15秒


ローポストの河田美紀男にボールが渡った。

 

道谷《河田美紀男だ!! ゴール下!!!》


弥生 (物凄い大仕事が回ってきた!! 重圧に勝てるか!?)

 

ディフェンスの前川、両手を挙げて体を寄せる。 

(ノーファウル!)

 

美紀男、体をつけられた体勢でシュートへ。


赤木 (難しいぞ!! 決められるか!?)

 

河田雅史 「美紀男、行けええーーーー!!!!」

(決めろ!! お前のほうがデカいんだ!!)

 

河田美紀男 (決める!! ゴール下が僕の仕事だ!)

 

キュ!!!


ターンからワンハンドジャンパー。

 

 

―――行った……!!!!!

 

 

バス!!!!

 

残り13秒

深体 92
青葉 93

 

深体大、9秒で攻撃を成功させる。

 

塚本《よく決めた!!!!!》

森尾 (まずは第一関門突破……!!)

 


―――1点差

 


深体大を推す者たちが雄叫びを上げる。


「いよおおおーーーーーーーーーっっっし!!!!!」

「美紀男!!! よく決めた!!!」

 

河田美紀男 (やった……!!!!!)

河田雅史 (よくやった!)

 

 


藤真 (1点差……!!!!)

 

ドクン!!!!!!

 

 

 


青葉ボール。

エンドラインでボールを持つ神。


一度パスフェイクを入れる。

このアクションに対し、一瞬大野が動く。

 


次の瞬間、スローイン。

 


藤真に渡った。

 


ドクン!!!

(1点差……)

 

キュキュ!!!!


ディフェンスが寄ってくる。

 

陸川 「藤真!!!!!!」

(どうした……!!?)

 

 

バスケ人生最大の緊張に襲われた藤真、

 

この時、頭の中は真っ白だった。

 

だが、その無意識の状態が

 

 

藤真にいつものプレイをさせた。

 


ダム!!!!!

 

持ち味のスピードでディフェンスの間を抜く。

 

唐沢 「…………!!!!!?」

牧 「………!!!!」

 

陸川 「おお……!!!!」

 

これまでの努力、練習量、挫折、全ての要素が

無意識の藤真の体を動かした。

 

これまで積み上げてきた努力は藤真を裏切らなかった。

 

 

これは、意識があったら確実にできない動きだった。

無意識だからこその、最高のパフォーマンスだった。

 


道谷 《抜いたああ!!!!!!》

塚本 《す……、凄すぎる!!!!!》

 

ダム!!


スピードに乗ったドリブルで続くディフェンスも抜き去る。


「おおおおおおおーーーーーーー!!!!!」

「速い……!!!!!」


「ディフェンスが追いつけない!!!!!」

 

藤真健司、まさかの単独突破。


深体大にとって完全に予想外の動きだった。

パスすらしないこの動きに対し、深体大のディフェンスの対応が遅れた。

 


ガッシイイ!!!


『ピーーーーーー!!!!!!』


藤真のドリブル開始からしばらくの後、
ディフェンスがやっと藤真を捕まえた。

勿論、意識的なファウルである。

 

残り時間 6.5秒

 

ファウルをとられた河田雅史が手を挙げる。

(………。)

 


道谷《ここで深体大がやっと止めました》

塚本《フロントコートまで一気に行ってしまいましたよ…。
信じられません。深体大も虚を突かれたでしょう》

森尾《ここで6秒も使われたのは、完全に誤算ですね…》

(アイツ、完全なファウル狙いの深体大を相手に
一人で6秒もボールを保持するとは……!!)

 

花形 「藤真………」

 


藤真の意識がここで戻った。物凄い量の汗をかいている。

「ハァッ ハァッ ハァッ……」

 

これに気づいた唐沢が牧を呼ぶ。

「藤真をファウル候補に入れろ。精神的にかなり追い詰められている」


牧、静かにうなずく。 (…………。)

 

 


『ビッビーーーーーーー!!!!!!』

 

ここでブザーが鳴る。

交代。


青葉、森重を下げて家村を投入。


杉山 「ファウルゲームに備えた。フリースロー対策だ」

 

コートを見つめる陸川。


「藤真……」

(精神が完全に限界を超えている…。踏ん張ってくれ…!)

 

青葉のスローイン。

ボールを拾った神、笑顔で藤真に渡す。


「藤真さんが入れてください。俺に」

 

藤真、ボールを受け取る。

「神……」

 

唐沢 「……!!!」

 


スローイン。


前川が河田兄にスクリーン。

これを使って、神がボールをもらいに来る。

 

ビッ

藤真から神にボールが入る。

 

ディフェンスが寄ってくる。

 

ダム!

神、少しのドリブルの後に捕まる。

 

河田兄 (神………)

牧 (……………。)

 


『ピーーーー!!!!!』

 

残り5秒

 

深体大が5つ目のファウル。

青葉にフリースローが与えられる。

 

『ビッビーーーーーー!!!!!』

 

同時にブザーが鳴る。選手交代。


青葉は、家村を下げて再び森重を投入。
守備力とリバウンドを強化した。


深体大は、河田美紀男を下げて伊達健太を投入。
シュート力を強化した。

 


シューターは神宗一郎。


藤真にスローインを託し、この大役を自ら背負った。

 


道谷《残り5秒! 神のフリースローです》

塚本《決めれば、勝利がグッと近づきます!》


清田 「神さん……!!!」

福田 「ジンジン……」

 

神、ゆっくりとフリースローレーンに向かっていく。

 

牧とすれ違った。


互いに目を合わせる。

 

牧 「………」


神 「…………」

 

『ツーショット!!』

 

一投目。

 

 

ザシュ!!!!

 

深体 92
青葉 94

 

道谷《決まったーーーーー!!!!!》

塚本《さすが神!!!!》

 

『ワンショット』

 

二投目。

 

「ふぅー」

神、ひと呼吸。


ゆっくりとボールを構える

 

藤真 (神…!!)

 

――――決めてくれ!!!


青葉ベンチのメンバーは両手を握って祈っている。

 

 


―――神宗一郎

 

彼に才能はなかった。


持っていたのはきれいなシュートフォームのみ。


だが、

ただひたすらに努力を続けた男は、

日本を代表するシューターとなり、


いつしか、こう呼ばれるようになった。

 

 

―――ゴッド・ハンド

 

 

 

 


ザシュ!!!!!

 

 

残り5秒


深体 92
青葉 95

 

 

道谷《決めたーーーーーーーー!!!!!!》


塚本《これがゴッド・ハンドだ!!!》

 

「神さん……!!」

清田、涙を浮かべて歯を食いしばる。 


桜木はただ呆然と見つめていた 「………」

 

 

「神ーーーーーーーーー!!!!!!!」


グッ!!!!

青葉メンバーが両コブシを握り締める。

 

 

すかさず陸川が声を出す。


「ディフェンス!!!!!」

 


「もう3点しかない!!!!!」


「深体大最後のチャンス!!!!!」

 

 


青葉学院、執念のディフェンス。

 


攻撃をモットーとする彼らが意地で守った。

 

 


最後の望みを託されたボール

 

 

諸星大による、ランニングしながらのスリーポイントが

 

 

 

リングで跳ねた。

 

 

 


電光掲示板


00:00

深沢体育大学 92
青葉学院大学 95

 

 


藤真の視界がかすむ。

 


ぼやけたコートに青葉学院のメンバーがなだれ込んでいた。


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大学編
目次

引用「Kの部屋」

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